【到達劇:3】あなたの主人公が到達する「未来」とは?
作家は1行目を書くまでに、実は膨大な時間を費やしている。これは大切なことだ。(山川健一)
『山川健一とぴこ山ぴこ蔵』
10月 18日 (土曜日) · 20:00~
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松慎一郎編集長からのメッセージ
“お待たせしました。
山川健一先生から小説を作る人に向けて、原稿が到着。
「作家生活のリアル」に基づく、非常に有効なアドバイスです。
とりわけ、「アイディアはある。だけどなかなか書き出せない」という作り手には大いに励みになるかと思います。
10/18の無料LIVE講座に参加してみようとお考えの方、参加すべきかお悩みの方は是非、読んでみてください。”
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【到達劇:第3回】実践あらすじ創作に挑戦!
こんにちは、ぴこ山ぴこ蔵です。
「目的を持った主人公が、困難に立ち向かい、最終的に成功する」
……というシンプルで強力なストーリー構造を持つ【到達劇】を連載で解説しています。
<創作ロードマップ>
STEP 1: 目標の設定
主人公が目指す、明確なゴールを提示します。
STEP 2: 障害の発生
目標達成を阻む、強力な障害や試練を登場させます。 ドラマは「対立」から生まれます。
STEP 3: 努力と達成
主人公が自身の努力、仲間との協力、そして成長によって障害を乗り越え、ついにゴールに到達します。
今回はそんな【到達劇】の作り方、第3回です。
前回のプロンプトを使ってChatGPTに生成させた5つのアイデアから、1つ選びました。
⑤【タイトル案:七日目の扉】
◆目標:
“扉を七つくぐるごとに心の一部を失う迷宮”を通り抜け、妹を救出する。
◆努力:
一部を失っても残るものは何かを考え、「失う前提」で計画を練る。
迷宮内の他の迷子と協力して、一人では思いつかない突破法を見つける。
◆障害:
・扉をくぐるたびに「音」「色」「手触り」など、五感や感情が抜け落ちるルール
・妹は“既に扉を五つくぐった存在”で、本人の意思を失いつつある
・最後の扉を開けた者は“外に出る代わりに、誰か一人を置いていかねばならない”
◆達成:
兄は、失ったものを他者との“繋がり”で補い、最終扉のルールを覆す。
“誰も置いていかない”という選択が迷宮そのものの呪いを解き、二人は無事帰還する。
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さっそくこの話であらすじを作らせてみました。
★ぴこ蔵からの指示
⑤【タイトル案:七日目の扉】の800文字あらすじを出してください。
🤖ChatGPT
了解しました。
こちらが『七日目の扉』の800文字あらすじです。
タイトル:七日目の扉
妹のハナが消えたのは、町の外れにある「七つの扉の迷宮」に入った日だった。
そこは、一つ扉をくぐるごとに、心の一部を失うという呪いがかけられた古い儀式場。
誰かを救うには、七枚すべての扉を通り抜けなければならない。
兄のナオは、ただ一人、その迷宮に足を踏み入れる決意をする。
最初の扉で、色彩が消えた。
二つ目で、音が消えた。
三つ目で、時間の感覚が歪み始めた。
けれどナオは、自分が「誰かのために来た」ことだけは忘れまいと進み続けた。
迷宮の中で彼は、既に五つの扉をくぐったハナに出会う。
しかし、彼女の目には光がなく、言葉も表情もない。
“心”のほとんどを失っていた。
ナオは問いかけるが、返事はない。ただ、手だけが彼を求めるように伸びていた。
六つ目の扉の前で、石碑に刻まれた文字を読む。
「最後の扉をくぐる者は、誰かをこの場所に残さねばならない」
それは、ナオか、ハナか。
どちらかが出るなら、どちらかが“忘れられる側”になる。
ナオは考えた。
「心を失うのが運命なら、せめて、それでもつながる形を作ろう」
彼は、自分の記憶とハナの記憶を混ぜた“紙飛行機”を折る。
二人が幼い頃に交わした言葉、遊んだ風景、笑い合った瞬間。
それらを紙にして、最後の扉に向けて投げた。
すると、扉は静かに開いた。
七日目の朝。
ナオとハナは、記憶をすべて取り戻したわけではなかった。
けれど、お互いの手の温もりだけは、はっきりとそこにあった。
「忘れても、思い出せなくても、
一緒にいたことは、心の形をして残っている」
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★ぴこ蔵です。このままでは説教臭くて面白くないので以下のように添削しました。
ぴこ蔵
『七日目の扉』のストーリーを、ファンタジックな設定はそのまま残して、<--秘密の指示-->の物語に変更してください。
※<--秘密の指示-->の部分は、ChatGPTには伝えていますが、あらすじを面白く読んでいただきたいので読者には最後に明かします。
🤖ChatGPT:
了解しました。
以下に改稿版のストーリーを提示します。
読み終えた瞬間にオチに気づく、寓話的構成となっています。
📙タイトル:七日目の扉📙
地中の奥深く、閉ざされた空間に彼はいた。
記憶も名前もない。ただ「行かなければ」という感覚だけが残っている。
暗闇の中に浮かぶ七枚の扉。誰かを探している。たしか、妹だった気がする。
彼女を見つけて、一緒に外へ出る。
そのために、扉をくぐるたびに“何か”を置いていくルールに従うしかなかった。
最初の扉をくぐると、音が消えた。
二つ目で、世界の輪郭が曖昧になる。
三つ目で、時間の感覚がほどけていく。
けれど、何か大切なものを追っているという気持ちだけは確かだった。
四つ目の扉を越えると、空気が変わった。
濃くて、ねばりつくような何かが、背中にまとわりつく。
五つ目で、小さな光が見えた。
その先に、うずくまる妹がいた。
彼女はすでに、五枚の扉をくぐった状態だった。
身動きができず、言葉も失っていたが、彼の気配に反応して手を伸ばしてきた。
六つ目の扉の前で、彼は石に刻まれた言葉を見つける。
「最後の扉をくぐる者は、誰かをこの場所に置いていかねばならない」
彼は考えた。
妹を置いて行くか、自分が残るか。
だが、選べるはずがなかった。
彼は背中から“古い殻”をはがすように剥ぎ取り、妹にそっと覆いかける。
そして、七つ目の扉へ。
――薄膜の向こう、世界が反転する。
彼は頭を持ち上げる。重かった体が軽くなっている。
身体が乾き、空を感じる。
真新しい羽が陽に透けて、きらりと光る。
遠くから、妹の羽音が聞こえた。
ようやく空を知る時が来たのだ。
☆☆☆
その時、木の幹を見上げた幼い男の子が指をさして叫んだ。
「パパ、何か飛んだよ、あそこ」
男の子の傍に立っていた父親が言った。
「あれは蝉だよ」
青い空に入道雲が湧き上がっている。
朝の透明な風に乗って、葉擦れのざわめきが木々に伝わっていった。
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★ぴこ蔵です
<--秘密の指示-->はこんな内容でした。
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「七日目の扉」のストーリーを、ファンタジックな設定はそのまま残して、蝉が孵化して飛び立つまでの物語に変更してください。ただし、読者には主人公が蝉であることがラストまで判らないように注意して書いてください。
↑↑↑↑↑↑↑↑
すると生成AIは最後の一行として
「七枚の扉をくぐり抜けた彼の名は――蝉。」
と書いてきました。これではなんだかヒーローショーの呼び込みみたいですねえ。
(文章中では「☆☆☆」と書かれている箇所です。修正前のエンディングの場所を明示するための目印として入れておきましたが、本来はこの「☆☆☆」は存在しませんのでご注意を)
そして、あまりに説明的すぎるこの一行は削除し、代わりにラスト数行を書き足しました。自分で書いたのはここだけです。
最後は「人の言葉」と「自然描写」で締めました。この方がしっかりとオチと余韻を味わえると思います。
次回は、このフレームを使って読者が作ってくれたあらすじを紹介し、ご質問に答えます。物語を盛り上げる「どんでん返し」のテクニックも入ってきます。お楽しみに!
【筆者紹介】
あらすじドットコム:ぴこ山ぴこ蔵
(ストーリー・ディレクター/PIKOZO)
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ブランドや商品の物語性を設計し、ユーザー体験をストーリーとして構築する
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キャラクターの動機や世界観の整合性を管理する
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ゲームでは、プレイヤー体験の起伏を物語面から演出する
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物語の構造を整理し、執筆者に適切なアドバイスをする
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ワークショップや講座で参加者が「面白い物語」を作れるように導く……など
物語制作における「ストーリー・ディレクター」とは、物語全体の方向性と統合を担う責任者。特にPIKOZOの場合は、どんでん返しを統合して全体のストーリーを監督します。
AIやツールを組み合わせて物語作りを加速する仕組みを研究し、プロの小説家・漫画家・シナリオライターと一緒に「どんでん返し」を磨いています。
近著:山川健一氏、葦沢かもめ氏との共著「小説を書く人のAI活用術」(インプレス)
物語のビジョンを描き、それを形にする手助けが必要なら……
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