「足し算」で定番ホラーを蘇らせる
「新しい状況」を物語に追加する
もともとのストーリーに「ゾンビの群れ」という危機的な状況を足してみます。これが強力な『障害』として主人公を苦しめます。
今回のポイントは、元ネタの登場人物を全員残すこと。
そういう条件を作って制約をかけることで「もう一歩」先の展開が思い浮かぶことがあります。
「赤ずきんゾンビ伝説」という、大人向けのホラーテイスト満載で可愛く恐ろしい絵本をGEMINIのStorybookで作成しました。
音声入り絵本はこちら!
小説版『赤ずきんゾンビ伝説』(1800字)
赤ずきんと呼ばれる女の子がいた。
彼女はお使いを頼まれて森の向こうのおばあさんの家へと向かうが、その途中で一匹の狼に遭い、そそのかされて道草をする。
おばあさんは天才と呼ばれるほどの生物化学者だった。
狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいるはずのおばあさんを食べようとするが彼女の姿は見当たらない。しかたなく狼はおばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待つ。
赤ずきんがおばあさんの家に到着すると、おばあさんに化けていた狼にまんまと食べられてしまう。
満腹になった狼が寝入っていたところを通りがかった猟師が気付き、狼の腹の中から赤ずきんを助け出す。
しかし、赤ずきんはいつの間にかゾンビウイルスに感染していた。
赤ずきんはゾンビと化し、猟師に襲いかかる。
猟師は銃で応戦するが、森からもゾンビの群れが現れてくる。
猟師は逃げ惑うが、どこにも安全な場所はない。やがて、狼もゾンビとなって復活し、猟師を追い詰める。
猟師はゾンビの群れに囲まれて絶体絶命の危機に陥る。
しかし、その時、空からヘリコプターが現れた。ヘリコプターからは火炎放射器を持った兵士たちが降りてきて、ゾンビたちを焼き払った。兵士たちは猟師を救出し、ヘリコプターに乗せた。猟師は兵士たちに感謝するが、兵士たちは冷たく言う。
「感謝したところでもう遅いかもな。君はゾンビウイルスに感染している可能性が高いんだ。君を救ったのは私たちじゃない。私たちのボスだ」
そう言って、兵士たちはヘリコプターの窓から外を指さす。猟師が見ると、そこには白い髪と赤いマントをした女性が立っていた。
彼女こそが赤ずきんの祖母にして真の赤ずきんであり、ゾンビウイルスの発生源であった。
真の赤ずきんがゾンビウイルスに感染した猟師を救助したのは、彼に興味があったからだった。
彼は狼に噛まれたにもかかわらず、ゾンビ化しなかったのだ。真の赤ずきんは、彼が自分と同じ特殊な遺伝子を持っているのではないかと考えた。
真の赤ずきんは、自分の遺伝子を研究するためにゾンビウイルスを作ったのだが、その過程で自分もゾンビ化してしまった。
しかし、彼女はゾンビとしての意識と能力を保ち、他のゾンビたちを支配することができるようになった。
兵士たちは真の赤ずきんに従うのは、彼女がゾンビウイルスの対抗策を持っていると信じているからだった。
彼女は兵士たちに、自分がゾンビウイルスを作ったことは隠し、自分が半分ゾンビ化したのは偶然だと言っていた。
彼女は兵士たちに、ゾンビウイルスの発生源を探すために協力するように頼んだ。兵士たちは彼女の正体に気づいていないが、彼女がゾンビウイルスに対する免疫を持っていることは知っていた。
彼女は兵士たちに、自分の血液を元に製造したワクチンを提供することで、彼らがゾンビウイルスに感染しないようにしていた。
しかし、それは彼女の罠であり、彼女の血液を受け取った兵士たちは次第に彼女に忠誠を誓うようになっていった。
猟師は真の赤ずきんに連れ去られたが、彼女の血液を受け取ることを拒否した。
彼は真の赤ずきんに対して怒りと恐怖を感じるが、同時に彼女に惹かれてしまうのだった。
彼女もまた、そんな彼に興味があった。彼はゾンビウイルスに感染しないだけでなく、彼女の支配にも屈しないのだ。
それは愛憎入り混じった関係だった。真の赤ずきんは猟師に対して、憎しみと欲望と愛情という複雑な感情を抱いた。
彼女は彼を自分のものにしたいと思ったが、彼が自分に従わないことに苛立つのだった。
かたや猟師は真の赤ずきんに対して、恐怖と同情と愛情という複雑な感情を抱いていた。
彼は彼女に反抗したが、かえって彼女の孤独や苦しみに触れることになった。
そして彼はいつしか彼女の本当の目的に気づくのだった。
真の赤ずきんは自分の遺伝子が人類の進化の鍵であると信じ、ゾンビウイルスを全世界に拡散させることで、自分と同じ特殊な遺伝子を持つ者を見つけ出そうとした。彼女は自分に匹敵する存在やパートナーを求めていたのだ。
猟師と真の赤ずきんは互いに惹かれ合いながらも対立し、最終的には激しい戦闘になった。その戦闘の中で、真の赤ずきんは猟師に重傷を負わせたが、自分も致命傷を受けた。
彼らは血まみれで抱き合うが、その時、彼らの血液が混ざり合い、新たに奇妙なウイルスが誕生した。
お互いの血を浴びた二人の肉体がみるみる若返っていく。しかし、その時、背後からの銃撃で二人は息絶えるのだった。
そして、二人を撃った人影は彼らの混じり合った血液を冷静に保存容器に採取した。それは医学者である赤ずきんの母親であり、真の赤ずきんの娘だった。<終>
今回はアポカリプス(終末世界)の物語にしてみました。「バイオハザード」の世界観とか「ストレイン」の人間関係などを参考にしてイメージしました。
まあ要するに、ゾンビによって新しいアンチエイジング・ウイルスが出現し、それは人類の役に立つかもしれないのですが、二人を射殺した赤ずきんの母親の冷酷な気配からすると、どうもあまり良い方向へとは行かないような気がしますねえ……。
もちろんこの手法はホラー限定というわけではありません。
プラスする状況がゾンビ禍ではなく、例えば未来からのタイムトリップによる「歴史の改ざん計画」などであればSFになります。さまざまなジャンルで設計してみましょう!
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