◆大事件生成プロンプト~AI創作が楽しくてたまらなくなる秘技その1

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◆AIがストーリーを完全自動化する日
AIストーリーテリングは“補助→共創→完全自動化”という進化をたどりつつあります。
そこでは一貫して「人間の意思と関与をどう担保するか」が問われており、技術に振り回されず“人の物語”をどう守るかが核心になります。
機械に生成させた物語が人間の審美眼や道徳観を越えられるのか、視聴者との共感レベルをどう設計するのかが、作者にとっての課題です。
技術は進むけれど、物語の背後にある人間性と社会的合意が整わなければ、AI時代のストーリーテリングは単なる効率化の道具に終わってしまうでしょう。
そんなのは全然楽しくない、とぴこ蔵は思うのであります。
◆あなたの「好き!」を確かめよう
「生成AIを使って作った物語には『自分らしさ』が足りない」という悩みがあります。
人間の作者が「私らしい物語を生成してください」という指示をAIに出すのであれば、作者は自分の作家的な特徴や傾向をAIに明確に伝える必要があります。
しかし、まだ自分の作家的な特徴や傾向を他者にうまく伝えられるほど言語化できていないことがあります。
そこでまずは作者が自分の好きなタイプの物語を見つけて、それを元にAIに自分の趣味や嗜好を分からせ、最終的にはその傾向に従って物語のあらすじを書くようにAIに指示するというプランを考えました。
達成するには数段階かかりそうですが、今回はその最初の試み。
まずはエンタメの重要な基盤である「異様で異常な大事件」を組み立てるプロンプトを考えてみました。
そもそも、あるストーリーが面白いかどうかは、物語の中で発生する事件の設定の段階でかなり決まってしまいます。
流行っているから、という理由だけで「とりあえず異世界だ!」などと安易に設定してしまうと大量の作品の中に埋没します。そこはレッド・オーシャンですからね。
なぜ異世界なのか? あなたは異世界もののどこが好きなのか? 異世界とは関係なくあなたが好きな感覚とは何なのか?
そのあたりをしっかり煮詰めて、あなたの趣味をぎゅっと濃縮し、密度をみしみし上げて、ドカンと爆発させないことには、目立つ作品は作れません。必要なのは狂気です。
そこで重要なのが「物語のきっかけとなる事件」であります。
【プロンプトの使い方】
1. 「大事件生成」プロンプトでアイデア生成:
例えば「台風で閉じ込められた避難所にゾンビの群れが襲ってくる」みたいな、あらかじめ用意した災害や脅威のマトリクスに基づき、ドラマチックな事件のアイデアを10個生成します。
2. 作者本人が興味を持つアイデアを選択:
生成された10個の事件アイデアから、自分が「面白い!」と感じるものを3つ選びます。満足できる3つが見つからない場合は、プロンプトを繰り返してさらにアイデアを出し、本当に好きな3つを厳選します。これは作者自身の嗜好を明確化するステップと言えます。
3. あなたの好きなアイデアを元にあらすじ生成:
最後に、3つのアイデアそれぞれについて400字程度の物語のあらすじを書くようにAIに指示します。
ただし、これはあくまでもぴこ山ぴこ蔵の偏った趣味に則って作成された手順ですので、留意すべき課題や限界も存在します。
「ちっとも私の好みに合っていない!」とお叱りを受ける前に、その想定される課題と限界を提示しておきましょうね。
●最初のアイデア群の偏り:
この「大事件生成」プロンプトで出るアイデアは、プロンプトの設計に依存します。
提示の例では災害×脅威のマトリクスですが、この類型自体が限られているため、ユーザーの嗜好がもしその枠外(例えば恋愛劇や日常ミステリ等)にある場合は適切に提示できないかもしれません。
つまり、そもそも初手のネタ出しが偏っているため、ユーザーの好みの全てをカバーできない可能性があります。
●創作初心者ゆえの試行錯誤:
この手法は初心者に有用ですが、「本当に好きな3つを妥協せず選ぶ」作業は案外難しいかもしれません。創作はどうしても読書量や経験値に左右されますから。
まだ自分の嗜好が定まっていない人は、結果もブレやすくなるでしょう。
また、AIのアイデアに引っ張られすぎると、本来自分が描きたいものからズレてしまう恐れもあります。手法を有効に使うには、その都度自分の内面と対話しながら進める慎重さも求められます。
●「自分らしさ」の演出効果には限界:
たとえテーマや設定面で自分好みになっても、それだけで完全にオリジナリティが確立するとは言い切れません。
機械生成する以上、既存のパターンの組み合わせであることに変わりはなく、「自分だけが持つ独創的な世界観」までは宿りにくいからです。
最終的にアウトプットされた作品の読者がどこまで「あなたらしさ」を感じ取れるかは別問題であり、真の意味で嗜好の核に迫るにはさらなる工夫が必要だと言えるでしょう。
……というわけで、この手法で得られるのはあなたの好みのほんの一端であり、「自分の代弁者」にはまだ及ばない点はご了承ください。
それでもなお、ぴこ蔵が言いたいのは、「AIと共に物語を作るのは楽しい」ということです。
ぜひ手を動かして、この面白さを実感していただければ幸いです。
大事件生成プロンプト
それではいよいよ実例を交えて解説していきます。
まずは以下の「大事件生成プロンプト」をお好きな生成AIに入力して実行してください。
↓↓↓↓↓「大事件生成プロンプト」ここから↓↓↓↓↓
A)大規模広範囲の激甚災害:地震、戦争、火山の噴火、津波など
B)中小規模の自然災害:落雷、台風、崖崩れ、河川の氾濫など
C)局所的な災害:火事、爆発、倒壊、毒性ガスなど
D)組織内の人的災害:権力、暴力、ハラスメント、集団ヒステリーなど
1)怪物的な単独存在:モンスター、通り魔、野生生物など
2)パンデミックの原因となる群れ:ウイルス、細菌、ゾンビなど
3)オカルト、SF的存在:宇宙人、心霊、ロボット、超能力など
4)集団的な暴力装置:秘密結社、カルト、反社会的組織など
5)偶然による出来事:ハプニング、ギャンブルの結果など
ABCD×12345のグループの組み合わせから、以下の例のようなドラマチックな事件を10タイプ出してください。
例:
・戦場に幽霊が現れて兵士の戦意を喪失させる
・台風で閉じ込められた避難所にゾンビの群れが襲ってくる
・火事の現場に通り魔が現れて消防士を襲う
・権力者のパワハラに萎縮する現場で偶然の出来事が連続して発生する
↑↑↑↑↑「大事件生成プロンプト」ここまで↑↑↑↑↑↑
プロンプトのイカした使い方
このプロンプトを使うと、例えばこんな答えをAIが作ってくれます。
※下記のネタはClaudeで生成したサンプルです。
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Claude Sonnet 4
以下、ABCD×12345の組み合わせから10のドラマチックな事件を提案します:
A×3:地震の避難所で超能力者が現れ、救助活動を混乱させる 大地震後の避難所に、物を念力で動かす能力を持つ謎の人物が現れ、支援物資を独占しようとする。
B×4:台風で孤立した町を秘密結社が占拠する 台風による道路封鎖で外部との連絡が断たれた小さな町に、武装した秘密結社のメンバーが侵入し、住民を人質に取る。
C×2:工場爆発の現場にウイルスが蔓延する 化学工場の爆発事故で有毒ガスが発生した現場に、偶然にも感染力の強いウイルスが流出し、救助隊が次々と感染する。
D×1:職場のハラスメントがエスカレートし、怪物的な存在と化した上司が部下を追い詰める パワハラが日常化した職場で、上司が異常な執着を見せ、部下を物理的に追い回すモンスターのような存在になる。
A×5:戦争中の偶然の出来事で敵味方が協力することになる 激戦地で偶然の誤射により地下シェルターに敵味方が閉じ込められ、共通の脅威に立ち向かう。
B×3:崖崩れで閉じ込められた集団の中に宇宙人が紛れ込む 土砂崩れで孤立した山小屋に避難した人々の中に、人間に化けた宇宙人が混入し、正体を隠しながら目的を遂行しようとする。
C×4:火事の現場でカルト集団が放火魔として活動する 連続放火事件の背後に終末論を信じるカルト集団が関与し、消防士や住民を標的にした組織的犯行を展開する。
D×2:集団ヒステリーに陥った組織に感染症が蔓延する 企業内で根拠のない噂が広がり集団パニックが発生した際、実際に感染力の強い病原体が社内に持ち込まれる。
A×4:津波の避難中に反社会的組織が混乱に乗じて犯罪を実行する 大津波警報で避難する住民の混乱に紛れ、組織的な窃盗団が空き家を狙った犯罪を大規模に展開する。
C×1:毒性ガス漏れの現場に野生の猛獣が逃げ込む 化学プラントからの毒ガス漏れで避難区域となった地域に、近隣の動物園から逃げ出した大型肉食動物が迷い込み、防護服を着た作業員を襲う。
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(1)これらのAIのネタから、あなたが好きなものを3つチョイスしてください。
(2)3つ見つからなかったら、生成AIに別のネタをもう10個作らせてください。同じプロンプトを入れてくれればいいです。
そして自分の好きなものを3つになるまで見つけてください。
この時に重要なのは、あんまり安易に妥協しないで欲しいということです。何度繰り返してもいいので、本当に好きなネタが3つそろうまで選んで下さい。
(3)3つ選んだら、生成AIに指示して、それぞれを400文字のあらすじにしてもらいましょう。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
Claude Sonnet 4
3つの物語のあらすじ
1. 避難所の異能者(A×3)
大地震で倒壊した小学校の体育館に避難した住民たち。救助隊のリーダー格である消防士・田中は、物資の配給を仕切りながら住民の不安を和らげようとしていた。しかし、避難者の中に紛れ込んだ青年・佐藤が、実は物を念力で動かす超能力者だったことから状況は一変する。佐藤は最初、瓦礫の除去を手伝うふりをして信頼を得るが、次第に支援物資を独占し、反抗する住民を超能力で威圧し始める。田中が真実に気づいた時、避難所内は佐藤を崇拝する派閥と恐れる派閥に分裂していた。外部からの救助が遅れる中、住民たちは「救世主」の正体に翻弄され、本当の敵が誰なのかわからなくなっていく。閉ざされた空間で、希望の象徴だった人物が絶望の源となる心理サスペンス。
2. 山小屋の侵入者(B×3)
登山中に崖崩れに遭い、山小屋に閉じ込められた8人の登山者たち。リーダーの山田を中心に、救助を待ちながら互いを励まし合っていた。しかし、その中の一人・鈴木の行動に違和感を覚え始める山田。鈴木は人間の常識を微妙に外れた発言を繰り返し、仲間の個人情報を異常に詳しく把握していた。山田が密かに観察を続けると、鈴木が夜中に奇怪な通信を行い、人間ではない何かに報告していることを発見する。実は鈴木は人類調査のため地球に潜入した宇宙人だったのだ。しかし、崖崩れによって予定が狂い、正体がばれそうになった鈴木は、証拠隠滅のため他の登山者たちを始末しようと企む。密室と化した山小屋で、生存をかけた人間対異星人の攻防が始まる。
3. 炎上する信仰(C×4)
連続放火事件に悩む住宅街で、消防士・佐々木は不審な共通点に気づく。火災現場に必ず現れるボランティア団体「光の会」のメンバーたち。彼らは被害者に寄り添い、支援を申し出る善意の集団として地域で信頼されていた。しかし佐々木の調査により、「光の会」が終末論を信じるカルト集団で、「浄化の炎」として計画的に放火を繰り返していることが判明する。教祖・田村は「火災で亡くなった人々は天国へ昇った」と信者を洗脳し、放火を神聖な儀式として正当化していた。佐々木が真実を暴こうとした時、「光の会」は最大規模の放火計画を実行に移す。炎に包まれた街で、狂信者たちと対峙する佐々木。果たして宗教的狂気を止めることができるのか。善意の仮面を被った組織的犯罪の恐怖を描く。
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★ぴこ蔵です。
ちなみに私が最も気に入ったのは「2. 山小屋の侵入者(B×3)」のストーリーでした。
「敵の正体は事もあろうに宇宙人だった」
そんな荒唐無稽な展開にいかに説得力を持たせるか、というハードルの高い要求が私を突き動かしてくれます。
ホラーとして攻めるか、ユーモアで迎え撃つか、あるいは科学的にリアルなSFにするか。いろんな戦略が頭をかすめてウズウズします。
遊び心というかいたずら心というか。
思えば、私にとってはこれが物語作りのいちばん楽しいところであり、中学生の頃にショートショート同人誌にのめり込んだ動機でありました。
誰かを腰が抜けるほど楽しませたい。
ただただその力を獲得したい。
「受賞」や「お金」や「権威」も確かに重要ですが、何よりもこの原初の純粋な衝動こそが私を(そしてもしかするとあなたを)今も創作に駆り立てる唯一の理由なのかもしれません。
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