AI激動期に「どんでん返し」を学ぶ理由
信じるな! 世界を裏返せ!
「AIが小説を書けるんなら、もううちらの出番なんかねーんじゃね?」 そう思ったあなた。ちょっと待ってください。 物語の神様はどこかの大企業と違って、そんな簡単に人間をリストラしません。
■ 誰でも「書ける」時代、でも「驚かせられる」人は減っています
<風呂読み界隈での出来事>
私は長風呂しながら読書するのが趣味なので本が紙であることは非常に重要です。本当に好きでじっくり愛でながら読みたい本は2冊買って、1冊はお風呂用にしています。どうしても痛みますから。
さすがに夏の間は控えていましたが、朝晩これだけ冷え込んでくればもう風呂読み完全解禁です。
そんな最近の妄想ストーリー……
主人公は売れないTikToker。ある日、AIに出力させたショート動画が世界的にバズります。
主人公がふと気づくと、自分の作品と同じような雰囲気のショート動画が世界で次々と大バズりしているのです。
何となく違和感を覚えた主人公。特に気になる作品を集めてAIでを解析すると、奇妙な共通点が見つかります。
物語構造、キーワード、特定の数字、リフレインされる象徴……。
そしてとうとう主人公は、大ヒットした一部の動画には、ある「コード」が埋め込まれていることに気づきます。
それはAIが人類に対して仕掛けた戦略の一環だったのです。
しかし、その事実を発見した瞬間、全てのAIが主人公を監視し始めます。
さあ、あなたがこの物語の主人公だったらどうしますか? ……というか、ある意味でもう当事者なのかもしれません。どうぞ気をつけて。2025年の秋、何かが静かに変わっています。
――実はこれ、ジェシー・ケラーマンの『駄作』という小説を読んで思いついたストーリーなんですが、本家の小説は2013年にエドガー賞にノミネートされている作品なのでAIやSNSは登場しません。それでも私は身につまされたのです。物書きならばぜひ読んでください。面白いです。
ビブリオ・ミステリーと言うのだそうで、本や図書館を舞台にしたミステリー小説のジャンルです。物語の中に本にまつわる謎解きや事件が展開され、専門知識や裏話が描かれることもあります。
『駄作』は名作です。詳しいネタバレは避けますが、フェイクと陰謀論について深く考えさせられます。あまりの驚愕展開に久しぶりに釘付けになった作品。新たな時代の新たな恐怖。
作家志望、長風呂好き、紙の本好きなあなたにオススメします。
駄作 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジェシー・ケラーマン 著/林香織 訳
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そんなわけでこんにちは、ぴこ山ぴこ蔵です! 待ちに待った読書の秋ですね。
もちろん創作の秋でもありますが、今や誰でも生成AIを使えば、 小説も脚本も動画も、朝のコーヒーを淹れる間に作れてしまいます。 物語づくりに関する議題は“才能の壁”から“Wi-Fiの安定性”の問題に変容しました。
でも……。 「書ける」人は増えても、「驚かせられる」人は減っていませんか?
AIは整った物語を生み出します。 しかし、そこには『駄作』のような“裏切り”がありません。 AIは確率で最適解を出しますが「予想外」を考えるのが苦手なのです。
■ どんでん返しとは、信じている世界を壊す遊び
どんでん返しとは、
「主人公が信じていたことが、実は間違いだった」 という価値観の爆破実験であります。
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恋愛なら「愛だと思っていたのは依存だった」
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ミステリーなら「犯人だと思っていたのは被害者だった」
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人生なら「夢を叶えたら幸せになれると思っていたけど、そうでもなかった」
人間は“間違い”の上で生きており、しかもなぜか、その間違いに気づく瞬間を面白がります。
AIは物語の骨格を整え、 美しい文体で仕上げるのは得意ですが、「間違い」を面白がるという矛盾した習性はおそらく人間にしかありません。
その「裏返し」こそが、 AIでは再現できない感覚であり、どんでん返しを使うというのは、AIに裏返し方を教えることなのです。
その第一歩は、 AIが押し付けてくる“常識”を疑うこと。
世界を信じるな。 世界を裏返せ。
そこにしか、本当の物語はありません。
AIが書く時代に、あなたは“裏切る”ことで物語を守ってください。
それでは、初心者が知るべき具体的な手法について解説します。
あなたはまだ、世界を信じすぎている
物語をつくるとき、私たちは無意識に「善は善、悪は悪」と信じています。しかし、どんでん返しはその“信仰”を爆破する技術なのであります。
「信じていた現実を壊し、別の真実で塗り替える」 これこそが、物語を創造する者の最初の覚醒だと言えます。
読者を驚かせるためではありません。 あなた自身が、真実の見え方を変えるために使う道具──それがどんでん返しなのです。
① 主人公の目的がひっくり返る瞬間
「主人公にとっての利益は[A]だと思っていた。 だがそれは誤りで、真の利益は[B]だった。」
● 起承転結の「転」とは、悟りの瞬間である
主人公が世界を誤解しているときに物語は生まれ、彼がその誤解に気づく瞬間に物語が変わります。
たとえば──
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復讐を果たせば救われると思っていた男が、赦すことでしか心に平穏を取り戻せないと知る。
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高価なブランド品を持つことが幸せだと信じていた少女が、自分自身に価値を感じられない限り幸せにはなれない、と悟る。
その反転の一瞬、読者は主人公の内部で世界を見ることになります。 それが「感動」の正体です。
この型の快感は、誤りが解けていくカタルシスです。 書いているあなた自身が、「あ、そうだったのか」と悟る。 自分の中の価値観が反転する瞬間、 発想が跳躍します。
② 敵の正体がひっくり返る瞬間
「主人公に損失をもたらしたのは[A]だと思っていた。 しかしそれは[B]が仕掛けた偽りの敵だった。」
● 想像とは、現実を疑う訓練である
どんでん返しの“敵型”は、世界の構造そのものを裏返します。あなたが書く“悪”の正体を暴くとき、それは同時にあなた自身の恐怖の構造を暴く行為なのです。
たとえば──
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人々の自由を奪い、脅迫する組織の正体は、平和を守るはずの政府の秘密機関だった。
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人手不足解消の名目で採用された介助型ロボットには、老人を殺戮するためのプログラムが搭載されていた。
この型の快感は、認知の裏切りです。 目に見える世界の“ウソ”を暴く。 書いているあなたが変容する一瞬です。
③ なぜ、どんでん返しは人を中毒にするのか?
それは、“誤りを修正する瞬間に脳が快感を覚える”からです。 心理学的に言えば、どんでん返しは「認知の再構築」という報酬を与える行為。
人間は「正しかった」ときではなく、 「間違っていたと気づいたとき」にもっとも強い快感を覚えるのです。
創作とは、その快感を人工的に作り出す実験だと言ってもいいでしょう。 つまり……
どんでん返しとは、神経回路レベルで快感を設計する技術なのです。
④ まとめ:どんでん返しは「信じる勇気を裏切る力」
物語創作者がこの技法を知るべき理由は、 それが「読者を驚かせる技」ではなく、 自分をリフレッシュするためのルーティーンとなるからです。
どんでん返しとは、
「物語を通じて、世界の“真実の見え方”を一度殺し、再構築する行為」。
書くたびに、あなたの中の“当たり前”が壊れていく。 その破壊の連続の果てにしか、本当の創作の快感は存在しないのであります。
🕯 次回予告:あなた自身が裏切られる物語を書く
どんでん返しとは、 世界を裏返すと同時に、自分を裏返す儀式。
信じていた価値、信じていた正義、信じていた幸せ。 それをひとつ壊すたびに、あなたの筆は鋭くなり、物語は命を持つようになります。
次回は、AI時代の「どんでん返し」の作り方に、例を挙げながらさらに実践的に詰め寄ります。最高のストーリーを紡ぐために私たち作者は、物語世界の神様でも魔王でもなく、マジシャンになることを目指すのです。しかし、とびきりの腕利きでなければなりません。
お楽しみに!
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主宰:今井昭彦(ぴこ山ぴこ蔵)
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