物語の結末、スカッと突き抜ける「3つの選択肢」
女王の帰還~マザコン男を洗脳する戦略について
成長物語とは「主人公が変わる」話である
こんにちは、ぴこ山ぴこ蔵です!
前回のおさらいをしておきましょう。
「ダメな自分を超えて成長」したり「本当の居場所を見つけ」たり……
主人公は、最初と最後で “ちがう自分” になります。
この “変化” こそが、物語をおもしろくします。
「変わる瞬間」を書けば、誰でも人を引きつける物語が書けるのです。
でも、どこがどう変わるのでしょうか。主人公の変化を明示するためには何を書けばいいのでしょうか。
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まず、変わる前の主人公を描いておく必要があります。
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次に、主人公が変わるきっかけとなる衝撃的な出来事が起こります。
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最後に、その事件によって主人公の価値観がひっくり返るのです。
気づかないうちに“常識”に縛られていた主人公は、その価値観をかなぐり捨て、自分の意志で未来を選ぶことになります。つまり「目的」を決定するのです。
ぴこ蔵はその選択肢を3つに限定することで、ストーリー構築の流れをスムーズにしようと考えました。
その3つとは何でしょうか。これが今回のテーマです。
あなたの主人公の真の目的とは
ぴこ蔵の使う選択肢は3つあります。
主人公の真の目的。
それは「危機からの脱出」なのか?
あるいは「希望への出発」なのか?
それとも「使命の達成」なのか?
⭕️【選択肢1:逃げる!(脱出)】怖い・危ない・苦しい場所から抜け出す。
キーワード:逃走、サバイバル、一人ぼっち
「この場所、ヤバすぎる...」って気づいたら、そりゃ逃げますよね。
例:
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先生が実は危険な犯罪者だとわかって、部活から脱出する
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仲間だと思っていた組織全体が敵だとわかって、一人で逃げる
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「この会社やばい。もう耐えられない。出ていこう。」
この選択をすると、どうなる?
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追いかけっこのハラハラ展開が作れる
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主人公が孤独になって、心の葛藤が描ける
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「もう誰も信じられない…」というシリアスな雰囲気になる
⭕️【選択肢2:別の仲間を見つける!(加入)】
キーワード:転校生、新しい味方、第二の人生
前から気になっていた“別の世界”へ飛び込む。あるいは「この場所はダメだけど、本当に正しい場所がある!」と気づいて、そっちに行くパターンです。
例:
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会社の陰で悪いことをしている役員たちに対抗して、平社員たちの秘密グループに参加する
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裏切られた研究所を離れて、生き残りのために戦っている超能力者組織に加わる
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「運動部なんて自分には合わなかった。演劇部に移る!」
この選択をすると、どうなる?
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新しいキャラクターをたくさん出せる
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「前の自分」と「新しい自分」の違いが描ける
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希望のある展開になる
⭕️【選択肢3:あえて戻って戦う!(改革)】
キーワード:内部から攻める、ヒーローの決意、正面対決
これが一番カッコいいやつ。「逃げない。この場所を、オレが変える!」と決意するわけです。
例:
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先生の悪事を暴くため、あえて学校に残って証拠を集める
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組織の腐敗を内側から正すため、むしろ中心メンバーになろうとする
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「商店街の空気を良くするために、自分が動こう!」
この選択をすると、どうなる?
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主人公の覚悟がビシッと決まる
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味方と敵に分かれて、内部対立が生まれる
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「逃げずに向き合う」という熱いテーマが出せる
それではあなたの作ったあらすじの続きを
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Y1:逃げるルート
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Y2:新しい居場所へ行くルート
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Y3:内部告発・改革ルート
以上 の3パターンに分岐させて書いてみてください。
あなたのイメージに合う展開はどれですか?
実例:
美緒は、翔太と茜の距離が最近やけに近いことに気づいていた。
「うーん……信じるかどうかはあなた次第です……ってやつだな」
実家の近所のコンビニでつかまえて愚痴を聞かせた幼馴染の誠は、いつものように冗談なのか真剣なのか分からない。
そんなある日の昼休み、翔太のスマホに届く通知。ふと見ると画面の端に光った〈Aka〉の文字。
——やっぱり、茜と連絡してるんだ。
胸の奥がきゅっと縮む。翔太とは付き合って三年。だが、最近は約束をすっぽかされることも多く、美緒は焦りを覚えていた。
ある雨の帰り道、美緒は茜と鉢合わせした。茜は微妙な笑みを浮かべつつ、こう言った。
「……ごめん、美緒。翔太のこと、ちゃんと話したほうがいいと思う」
その言葉が、鋭い棘となって美緒の胸に刺さる。
その夜、翔太から「会って話したい」とメッセージ。
——終わりなんだ、きっと。
美緒は震える指で返信し、待ち合わせ場所に向かった。
冷たい小雨が降っている。
ベンチの前で、翔太は傘もささずに立っていた。
「誤解させて、本当にごめん」
翔太はスマホを差し出し、メッセージ画面を見せた。
そこには〈Aka〉の文字が。だが開いてみると、連絡相手は——「茜」ではなかった。
「“Aka”は、赤倉っていううちの母の知り合いのデザイナーさん。美緒に贈りたくて、ネックレスをオーダーしてたんだ。でも母がサプライズにしろって言うから……茜には、その相談をしてただけ」
翔太の声は震えていた。
「でも、それが美緒を傷つけてたなんて気づかなかった」
雨音が弱まり、美緒は一歩、近づいた。
「茜が言った“話したほうがいい”って……そういう意味だったの?」
翔太は頷く。
「今日、赤倉さんからネックレスが届いた。……渡したいのは、美緒だけだよ」
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さあ、あなたならここからどう展開しますか?
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Y1:逃げるルート
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Y2:新しい居場所へ行くルート
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Y3:内部告発・改革ルート
以上の3タイプの選択肢に沿って書き分けてみます。
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Y1:逃げる(脱出する)ルート
(1)「美緒、翔太の“嘘の上塗り”を見破り、別れを決断するエンディング」
翔太の説明は、あまりに辻褄が合わなかった。 茜の口ぶりもどこか芝居じみている。 美緒は、二人が示し合わせた雑な“言い訳”に、むしろ疑念が確信へと変わる。
——ああ、これは私を引き止めるための即席の嘘だ。
美緒は静かに翔太の手を振り払う。 「もういいよ。私を守るためじゃなくて、自分を守るためについた嘘だってわかったから」 呆れと冷めた感情だけが胸に残る。 三年の思い出よりも、いま目の前の真実のほうがずっと重かった。
美緒は振り返らず、雨上がりの道を一人歩き出す。 新しい日々の幕が、静かに上がる。
Y2:新しい居場所へ行く(夢を追う)ルート
(2)「疲れ果てた美緒が、誠の存在に気づき、彼と新たな恋を始めるエンディング」
三角関係の疑い、感情の消耗、そして翔太の説明。 すべてが終わったあと、美緒の心には虚しさだけが残った。
そんなとき、頭に浮かんだのは—— どんなときも支えてくれた幼馴染の誠だった。 落ち込む美緒に温かいココアを差し出してくれた手。 何も言わず隣にいてくれた夜。 彼だけは、最初から最後まで美緒の味方でいてくれた。
「……誠に会いたい」 その思いを認めた瞬間、胸のざわつきがすっと消える。
翌日、美緒は誠に会いに行く。 彼は驚きつつも、変わらない優しい笑顔で迎えてくれた。 美緒は悟る。 ——恋の終わりじゃなく、始まりに向かって歩き出す時なんだ。
Y3:内部告発・改革(女王の帰還)ルート
(3)「翔太がマザコンであると見抜いた美緒が、未来の主導権を握るため“逆に利用する”エンディング」
翔太の言葉の端々に感じた違和感—— それは“茜への疑い”ではなく、翔太の母親への過剰な依存が透けて見える違和感だった。
(あ、これ……マザコンだ) 美緒は気づいた瞬間、背筋が冷えた。 だが、同時に冷静に考える。
——結婚後の主導権を握るには、むしろ都合がいい。
弱気で母に逆らえない翔太は、裏を返せば“強く導かれること”に慣れている。 ならばその舵を握るのは、自分でいい。
美緒はふっと穏やかに微笑み、翔太の手を取る。 「大丈夫。私があなたを支えるから」 その声は優しいが、心の奥には計算された確かな意志が宿っていた。
——嫁姑戦争の未来図。 その主導権を、最初に確保したのは美緒だった。
まとめ:この“公式”を覚えておけば物語は作れる
メモを用意してください。物語は、次の順番で考えれば必ず動きます。
質問1: 世間という共同体の常識に縛られているあなたの主人公は、物語の最初でどんな思い込みに囚われていますか?(「自分のせいだ」「あの人が悪い」「誰のせいでもない」など)
質問2: どんでん返し「実は悪いのは別のやつだった」を考えてみてください。
質問3: 真実を知った主人公は、以下の3つの選択肢のどれを選びますか? 選んだ未来が、物語のエンディングになります。
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逃げる?
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別の仲間を見つける?
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あえて戻って戦う?
最後の3つの選択肢からどれを選ぶか決まれば、物語の後半がスルスルと書けるはずです。
✋️ちょっと待った!この方法が使えない場合もある
正直に言いますが、この方法は必ずしもあらゆる物語に使えるわけではありません。
使えないことが多い場合:
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「敵」が出てこない観念的な話
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しみじみした雰囲気を大事にしたい話
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主人公が最初から全部知ってる話
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キャラクターの気持ちの変化がメインで、事件はあんまり関係ない話
それに、この方法にこだわりすぎると、つまらない話になる危険もあります。
機械的にテンプレにはめていくうちにモチベーションが下がり、途中で「好奇心が冷めてしまう」わけです。
物語を書くというのは、本来は自分を解放する行為です。もっと自由で、もっとクレージーで、もっともっと楽しいものです。「この先が知りたい」とか「リベンジしたい」という慾望がグワーッと盛り上がるから快感なのです。
だから、ストーリーを冷静にコントロールするこの方法は「困ったときのお助けアイテム」として使ってください。完成する確率はぐんと上がりますが、絶対に従わなければならないルールではありません。
ただし、構成力を見せたい場合や、説明のためのサンプル作りなどにはとても役に立ちます。
また、締切が近いのにたくさんのパターンが要求される時には、大いにあなたの力になれると思います。
最後に:完璧じゃなくても全然かまわない
プロの作家だって、最初から完璧な物語は書けません。何度も書き直して、直して、また直して…それでやっと一つの作品ができるのです。
だから、今あなたが「書けなくなった…」と悩んでいるのなら、それはちゃんと物語を書いている証拠です。苦しいのは当然なのです。
この記事の方法が役に立ったら使ってください。合わないと思ったら無視してください。
大事なのは、あなたが書きたい物語を、あなたのやり方で、最後まで書くことです。
がんばってください!
「とにかく不労所得が欲しいんだ!」「このままじゃ絶対デビューできないわ!」
そんなあなたに、ドンデニスタぴこ山ぴこ蔵が「面白い物語」を作るためのあの手この手を教えます!
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