100年以上愛される物語に学ぶ ~小道具で逆転を作る方法
こんにちは。ぴこ山ぴこ蔵です。
O・ヘンリの代表的短編
『アイキイの惚れ薬』は、発表から100年以上が経過した現在でも、落語やテレビコメディなどに姿を変え、愛され続けている作品です。
なぜ、この物語は時代を超えて面白いのでしょうか。
これから全3回にわたって、作品に盛り込まれた構成・演出技術を読み解いていきます。
原作を知らなくても問題ありません。まずは、物語の骨組みを簡単にご紹介しましょう。
惚れ薬を頼まれた薬剤師
薬剤師アイキイは、下宿屋の娘ロージィに恋をしています。
しかし、ロージィにはマッゴーワンという恋人がいました。
ある日、マッゴーワンがアイキイの店を訪れます。
「今夜、ロージィと駆け落ちする。でも、彼女はなかなか決心できない。気持ちを後押しする惚れ薬を作ってくれないか」
友人の頼みを、アイキイは引き受けます。
ところが、彼が渡したのは惚れ薬ではなく、飲めば数時間眠ってしまう強力な睡眠薬でした。
さらにアイキイは、ロージィの短気な父親に駆け落ちの計画を密告します。
父親は激怒し、銃を持って裏庭で待ち伏せすることになりました。
これで恋敵は破滅する。
アイキイはそう考えました。
ところが翌朝、マッゴーワンは満面の笑みで現れます。
「駆け落ちは大成功だったよ!」
彼は土壇場で、薬を使ってロージィの心を操ることをやめていました。
そして、自分を嫌っている父親を不憫に思い、そのコーヒーに薬を入れていたのです。
父親は眠り込み、銃撃は起こりませんでした。
一つの小道具が、正反対の意味を持つ
この物語の中心にあるのは、「惚れ薬」という小道具です。
しかし、その正体は睡眠薬です。
マッゴーワンにとっては、恋をかなえるための希望。
アイキイにとっては、恋敵を陥れるための罠。
アイキイが嘘をついたことで、一つの薬に正反対の意味が生まれています。
そして、薬を飲ませる相手が変わった瞬間、その役割も反転します。
マッゴーワンを陥れるはずだった睡眠薬が、父親による銃撃を防ぐ切り札になったのです。
つまり、この結末では、
アイキイが仕掛けた睡眠薬
父親が企てた銃撃
という二つの悪がぶつかり、互いを消しています。
悪を正義が倒すのではなく、悪と悪を衝突させて相殺する。
これが、『アイキイの惚れ薬』の鮮やかな逆転を生み出している仕組みです。
第1回の無料講義では、この物語のあらすじをたどりながら、小道具に二面性を持たせ、最後にその役割を反転させる方法を詳しく解説しています。
▶ O・ヘンリ『アイキイの惚れ薬』第1回を見る
次回は、もう一段深く考えます。
マッゴーワンが薬を父親に飲ませたのは、単なる思いつきだったのでしょうか。
実はその前に、彼の中で重要な「選択の変化」が起きています。
次回は、主人公の成長を言葉で説明せず、行動と結末で見せる方法についてお話しします。
すでに登録済みの方は こちら
