100年以上愛される物語に学ぶ ~主人公の成長を結末につなげる方法
こんにちは。ぴこ山ぴこ蔵です。
前回は、O・ヘンリの短編『アイキイの惚れ薬』から、小道具の役割を反転させる方法を取り上げました。
薬剤師アイキイが恋敵のマッゴーワンに渡した「惚れ薬」は、実は強力な睡眠薬でした。
さらに、駆け落ちを知ったロージィの父親は、銃を持って待ち伏せしています。
ところが、マッゴーワンは無事に駆け落ちを成功させました。
彼が睡眠薬を入れたのは、恋人ロージィの飲み物ではなく、父親のコーヒーだったからです。
では、なぜマッゴーワンは薬を使う相手を変えたのでしょうか。
主人公の成長は、選択の変化で見せる
物語の序盤で、マッゴーワンは惚れ薬を使って、ロージィの気持ちを自分に向けようとしていました。
しかし、駆け落ちを前にして考え直します。
薬で心を操うのはやめよう。
彼女が心変わりするなら、それを受け入れよう。
ここで変わったのは、単に薬を飲ませる相手ではありません。
マッゴーワンは、
恋人に惚れ薬を使うか、使わないか
という同じ問題に対して、序盤とは違う答えを選んだのです。
物語の中で主人公を成長させるとき、気持ちを言葉で説明するだけでは、その変化は結末に影響しません。
序盤と終盤で同じ問題に直面させ、違う選択をさせる。
その選択の変化によって、主人公の内面を行動として見せることができます。
「選択の変化」と「どんでん返し」は別のもの
ここで注意したいことがあります。
マッゴーワンが、
ロージィに薬を使わないと決めたこと
父親のコーヒーに薬を入れたこと
は、同じ出来事のように見えますが、構造上は別のものです。
前者は、主人公の成長を表す選択の変化。
後者は、結末を反転させる新しい思いつきです。
まず、恋人の心を操ることをやめる。
そのうえで、自分を嫌っている父親に好かれようと考える。
この二段階を踏んだからこそ、マッゴーワンの行動が、単なるご都合主義ではなくなります。
そして、その選択の変化によって、
恋敵を陥れるはずだった睡眠薬が、父親の銃撃を防ぐ切り札へ変わる
という逆転が成立します。
主人公の成長、小道具、敵の行動、どんでん返しが、ひとつの結末へ向かって連動しているのです。
あなたの物語では、主人公の成長が、問題を解決する方法まで変えているでしょうか。
「反省した」「勇気を出した」と説明するだけでなく、序盤とは違う選択をさせることで、結末そのものを動かせないでしょうか。
第2回の無料講義では、この主人公の変化を行動に置き換え、別の仕掛けへ連動させる構成を詳しく解説しています。
▶ O・ヘンリ『アイキイの惚れ薬』第2回を見る
次回は、この物語を「誰の目を通して語るか」について考えます。
駆け落ちを実行するのはマッゴーワンです。
それなのにO・ヘンリは、彼ではなく、悪だくみを仕掛けたアイキイを語り手に選びました。
なぜ、物語の中心人物ではなく、悪党の視点を選んだのでしょうか。
危険を読者に知らせながら、最も見たい場面だけを隠すサスペンスの作り方を読み解きます。
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