AIだけでは作れない！「どんでん返し」の物語構築力

物語創作の面白さは、圧倒的なオープニング、真綿で首を絞められるプロットポイント、不穏なミッドポイント、意外な結末、密かに張る伏線の快感。そして何よりも、全てが交錯する一瞬のどんでん返し。果たしてあなたはいくつ作れているか？

ぴこ山ぴこ蔵 2024.11.06

こんにちは、ぴこ山ぴこ蔵です。

どんでん返しは具体的にどう作ればいいのでしょうか？

最もシンプルな答えは「Aだと思ったらBだった」です。

しかし、これだけだと省略しすぎて理解されにくいのも確かです。

そこで、もう少し踏み込んで、しかもできるだけ簡単に作るための講座を、このニュースレターで何回かに分けて展開しようと考えています。

できるだけ短期間で効率よく説明したいと思いますので、最後までどうぞよろしくお願いします。

まずは、どんでん返しの実例を挙げてみましょう。

（1）密林の奥深くに美しく佇む歴史ある王廟を倒壊させたのは、象だと思ったら、数億匹の蟻の大群だった。

（2）初めて泊まっていった彼女の朝食のためにトースターのボタンを押したのは、彼氏だと思ったら飼い犬だった。

（3）さらわれた赤ん坊が乗せられた無人AIタクシーに、誘拐犯から逃げ出す指令を出したのは、人間だと思ったらインコだった。

（4）静まり返った観客の前で朗々と歌を歌い始めたのは、VIPの歌手だと思ったら、そのボディガードだった。

（5）「ここには絶対に入っちゃいけないって言ったよね」という言葉を喋ったのは、警察官だと思ったら警察犬だった。

いかがでしょうか？　わずか50文字ほどの「どんでん返し」ですが、それぞれの物語のイメージは広がったでしょうか？

実はコレ、全部同じ形式の構文を元に作ったものです。

XYAB構文と呼んでいるのですが、非常にシンプルです。

この構文を使って作った短いどんでん返しで、世界観は果たしてどのぐらい伝わるでしょうか？

それを確認するためにAIを使ってみましょう。

（1）の文章を元にした物語のあらすじをChatGPTに書いてもらいました。

かつて栄えた古代王国の遺跡を訪れた考古学者の一団が、密林の奥に隠された歴史ある王廟を発見する。彼らはこの貴重な発掘に興奮し、王廟の中に眠る秘宝を求めて探索を始める。しかし、ある日突然、王廟が大きな音を立てて崩壊し始めた。最初は象の群れの大暴走の仕業だと疑われるが、真相はもっと驚くべきものだった。王廟の土台を無数の巨大蟻が長年にわたって侵食しており、その脅威によって崩壊してしまったのだ。

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「この恐怖の巨大蟻軍団が東京を襲う！」という話に展開すればなかなかのモンスターパニックになりそうです。このように、どんでん返しは物語のプロローグに用いることも可能です。

（2）のあらすじをChatGPTに書いてもらいました。

新しい恋人を初めて自宅に招いた若い男性が、彼女に感動を与えようと、朝食を準備する計画を立てる。彼は特別な日のために手の込んだ朝食メニューを考え、早起きしてキッチンで準備を始めるが、ふとした瞬間に小さなハプニングでキッチンを離れることになる。その間、彼の飼い犬が好奇心からトースターのボタンを偶然押してしまい、彼女が起きて来たときにはトーストが焼けあがっていた。驚く彼女に、彼は状況を説明し、二人はそのユニークな出来事に笑いながら一緒に朝食を楽しむのだった。

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ほんわかしたラブコメでも楽しいし、別れた二人の思い出話としてしんみり描くのもいいかもしれませんね。小道具やキャラクターの組み合わせによって、小さなどんでん返しはエモい使い方もできるという例でした。

（3）のあらすじも同様に。

未来の都市で、赤ん坊が誘拐される事件が発生する。犯人は赤ん坊を無人AIタクシーに乗せ、そのまま逃走する計画だった。しかし、予期せぬことが起こる。誘拐された家庭のペットであるインコが、偶然にもAIタクシーの音声認識システムにアクセスし、繰り返し「帰れ、帰れ」と鳴いていた。このインコの声がシステムに誤って認識され、「逃げ出す」という指令として解釈されたため、タクシーは自動的に赤ん坊を無事に家に帰すルートに切り替わる。この奇跡的な偶然により、赤ん坊は無事に家族のもとに戻され、インコは英雄として讃えられるのだった。

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どんでん返しが作り出す思いがけないサプライズは、サスペンスやスリラーだけではなく、ホームドラマやユーモラスなストーリーにも生かすことができます。

（4）のあらすじはドラマチックで感動的な話にしてくれるようにとChatGPTに頼んでみました。

国際的に有名な歌手エレナが待望のチャリティーコンサートでパフォーマンスを行うことになり、会場は彼女を見るために集まったファンで満員となる。しかし、開演直前にエレナが突然の声帯の問題に見舞われ、歌うことが不可能に。彼女は涙ながらにステージを離れようとするが、その時、彼女の忠実なボディガードであるマイケルが前に出る。

不遇だった自分の人生を温かくサポートしてくれたエレナへの感謝の気持ちを込め、マイケルは思い切ってマイクを手に取り、彼女の代わりに歌い始める。会場は一瞬にして静まり返るが、彼の予想外の力強い歌声に次第に観客は感動し、最終的にはスタンディングオベーションを送る。エレナもまた、彼の行動に感激し、涙を流しながら彼と一緒にデュエットを披露する。このユニークな出来事が二人の間の絆を深め、世界中のファンに感動を与えることとなる。

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「虚を突く一瞬」というのはハートウォーミングなドラマでも効果抜群です。どんでん返しに組み込んでほしい『感情の方向性』をしっかりと指定すれば、AIでも微妙な情感を表現できるのです。

（5）のあらすじはホラー仕立てにしてもらいました。

深夜、理不尽な理由で犬を連れた警官に追われることになった青年、トムは、逃走中に不気味な廃墟のエリアに迷い込む。彼はかつてここで奇怪な事件が発生したという噂を聞いており、不安を感じながらも隠れる場所を探して建物内に入る。その瞬間、「ここには絶対に入っちゃいけないって言ったよね」という警告が聞こえる。トムは急いでその声の出所を確認しようとするが、人の姿はどこにもない。

恐怖に震えながら彼がさらに奥へと進むと、照明もない暗闇から警察犬が現れる。驚くトムに犬は再び同じ言葉を繰り返し、不自然な口調で警告を発する。青年はその場を離れようとするが、犬は彼を妙な廃墟の奥へと導く。そこではかつての犠牲者の霊が彷徨い、トムは自分が何か未知の力に囚われていることを悟る。

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なんといっても「どんでん返し」は、恐怖や混乱の幕開けに使うことによって最高の効果が与えられるテクニック。さあこれからとんでもないことが起こるぞ、という「クライマックス宣言」なのです。

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このように、わずか50文字ほどの原型ですが、どんでん返しを使うことによって、表現したい物語の世界観がChatGPTにも伝わったようです。

こんなどんでん返しの原型を作るために使ったのが「XYAB構文」です。ぴこ山ぴこ蔵が創案した構文なので、検索しても出てきません。

基本的には

「XをYするのは、Aだと思ったらBだった」

「XをYするのに必要なのは、Aだと思ったらBだった」

この2つの構文を覚えるだけでどんでん返しができます。

とりあえず今回はこの構文をメモしておいてください。

（次回に続きます）