【物語の使い方】俺の地元は本当に面白くないのか?

人生はよく旅に例えられます。だとすれば物語の本質はその旅行記です。今回は、ふるさとの伝説が牽引する「物語の活用法」について語ります。ホラーマーケティング×AI×ストーリーの相乗効果は、あなたと地元の未来を変える希望となるかもしれません。
ぴこ山ぴこ蔵 2025.10.21
誰でも
旅の途中、実際にこのような大雑把な標識を見たことがあります。スケール感に呆然としました。

旅の途中、実際にこのような大雑把な標識を見たことがあります。スケール感に呆然としました。

⭕️移動が嫌いな私が大旅行に出かけた理由

こんにちは、東京在住46年の田舎者・ぴこ山ぴこ蔵です。

子供の頃から極度の方向音痴で、必ず道に迷うので、私は都内の観光スポットを訪れた記憶がほとんどありません。

不思議なことに2Dのマップを覚えるのはすごく得意なんですが、これが3Dになるとたちまちランドマークを見失います。

先日はミヤシタパークに行くのに渋谷駅を出てから1時間以上さまよってしまいました。

千回以上は歩き回っているはずの新宿の地下街も、私にとってはまるで潜るたびに形を変えるトルネコのダンジョンのようです。

原宿や浅草や銀座や六本木がどこら辺にあるのか未だに曖昧ですし、たどり着く自信がなくてディ◯ニーランドや東京タワーやスカイツリーにさえ行ったことがない有り様です。

ところが、そんな呪われた私でも遠出をしたことがあります。

もう37~8年前のことですから、昔々の話です。

20代後半だった私は、中国の西安という街の夕暮れの喧騒の中にぽつねんと佇んでおりました。芥川の『杜子春』のオープニングと同じ状況です。

いや、杜子春が立っていたのは洛陽だろう? と思うかもしれませんが、初出には長安と表記されているんです。長安とは今の西安のことです。

実は芥川龍之介が単行本に収めるにあたって、言葉のイメージがぴったりするからという理由で長安から洛陽に変えたのだそうです。(詳しくは下記リンク)

20代後半だった私は方向音痴のくせにバックパッカーとして向上心もないままアジア(なにしろ広いので多少方向がわからなくても平気)を放浪していたのですが、それでも旅の目安となるいくつかの目標を設定していました。

その一つが、子ども心に「孤独感」の甘さと切なさを教えてくれた、憧れのダメダメヒーロー・杜子春と同じ場所に立ちたい、というものだったのです。

⭕️私を冒険に連れ出した「物語」

青春期を上手に終わらせられなくて、自分とは何かを探して揺れていた私は、昔読んだ物語の主人公への共感に縋るように長い旅に出ました。

出不精な私を、杜子春が広い世界に連れ出してくれたわけです。

ことほどさように、ストーリーは人間に行動を起こさせる強力なスターターキットだと言えます。

もしあなたが、自分自身や他の誰かに対して、ある行動を取ってほしいと願っているのであれば、物語がそのトリガーになります。

しかも最近では、AIを使うことでその効力を強化することが可能なのです。

今回はそんな「AI×物語創作」の相乗効果を使って実生活に影響を与える具体的な方法論についてお話したいと思います。

あなたが学んでいる物語創作の技術は「小説や脚本を書く」ことに留まらず、より大きなチャンスを運んできてくれるはずです。

例えば、先述した通り、私が実際に体感したのは「旅」と「物語」との相性の良さです。

この素材を使うとしたら、どうすれば「ストーリー」が「現実の行動」に干渉できるのでしょうか?

具体な答えの一つが「観光」です。

⭕️ホラーマーケティング×物語資産=観光開発

その前に、この記事を書いている私の簡単な自己紹介をさせていただきます。

私は今井昭彦(ぴこ山ぴこ蔵)と申します。Webを中心にさまざまなメディアや教育機関で面白いストーリーの作り方講座をレクチャーするようになって20年になります。それ以前は小説や漫画のラジオCMを制作する仕事を20年間やっていましたので、物語界隈の住人としては40年ほどになります。

2023年以降は特に、生成AIを活用してストーリーやアイデアを広げる方法を重視し、プロの視点から、AIとの対話方法や注意点など、AI時代の小説執筆のコツを解説しています。

最近では山川健一氏、芦澤かもめ氏との共著で小説を書く人のAI活用術 AIとの対話で物語のアイデアが広がるという本を株式会社インプレスから出版させていただきました。

そんな私は「ストーリーテリングの技術」を活用するシーンを常に探しています。

物語は人に情報を伝え、さらに多くの人々に広げていくための手段です。人生のあらゆる側面に自然にインフラとして組み込まれています。

このスキルを小説の創作だけに留まらず、教育やビジネスの現場で意識的に用いることにより、さまざまな問題を解決し、目的が達成できます。

逆に言えば、リアルな現場で実践的に使えるストーリーは小説やシナリオでも力を発揮するということです。人を魅了するドラマの構成はどんなジャンルであろうが共通なのです。

あなたの作り出す物語は現実に力負けしていませんか? 

さて、それでは実際に、リアルでもフィクションでも読者や観客を引き込むためにはどんな物語が効果的なのか、分かりやすく把握するために「観光」を例にとって解説します。

観光の目玉は、地域愛と豊富な情報です。

しかし、それらの情報を伝えることは「手段」の一つに過ぎません。

「目的」は聴き手の心を動かし、行動を促すこと。

つまり、ストーリーテラーの真骨頂は観光客の好奇心を刺激し、「その場所に行って非日常の時間を過ごしてみたい」という欲求に駆り立てることにあります。

これを可能にするのがストーリーテリングによる旅の演出、つまり「物語ツーリズム」です。

中でも『ホラーストーリー』は、観光客を惹きつける最強の味方になるでしょう!

⭕️なぜ俺の街には誰も来ないのか?

1.地元の活性化を阻むのは?

例えば、地元にお客さんを呼び込む知恵をひねり出そうとして、あなたはこんな疑問を感じたことはないでしょうか。

「なぜお客さんは写真だけ撮って帰るの? 土産も食事も落ちないのはどうして?」

「宿泊率が上がらないどころか、16時で人影が消えてしまう原因は何?」

「スポットは点在、移動がだるい、動線に物語がない……分かっちゃいるけどどうすればいい?」

「“映え投稿”は増えたのに、予約・来訪に繋がらない理由は?」

「一度来たら終わり。季節限定で消える。名簿も育たない。これって打つ手はあるの?」

「悪天候で壊滅。屋内代替や難易度切替がないのは誰のせい?」

「“体験”が売上にどう効いたか証明できないのは諦めるしかないの?」

資料作成を始めると、次々と問題が膨らんでいく。

そして、やる気が失われる……。

まさにシャッター商店街あるあるですよね。

ところが、私にはある観光地で実際に出会った、記憶に残るこんな体験があります。

2.ある観光地で体験したこと

ある街の観光キャンペーンで、参加者として、ステップ・バイ・ステップで街めぐりのコースを丁寧に教えていただくことがありました。

眺めの良い露天風呂、貴重な名勝旧跡、おいしいレストラン、地元の野菜が買えるお店、試飲できるワイナリー、絞りたての牛乳が飲める牧場。

参考にはなりましたが、正直なところ「ふ〜ん、後で行ってみなきゃ。でも時間がないな」という感想で終わってしまいました。情報が足まで届かなかったのです。

ところが、その後に偶然知り合った地元の人が「こんな不思議なことがあったんです」とある場所を教えてくれました。

その瞬間、私の心は「えっ、そんなことが起こったの?」「私も体験してみたい!」という気持ちに変わりました。

その後、どうしても行きたい気持ちが抑えられず、関連する神社仏閣や建築物を巡ったり、名物の団子を食べたりと、気がつけば夜中までずっとその「不思議なことが起こった」エリアで時間を過ごしたのです。

この経験から気付いたのは、『ワクワクする目的』の重要性です。

まず「やってみたい、行ってみたい」という目的意識をお客さんに持っていただくことで、さまざまな情報を心に届けられるようになります。

その時、私が体験したのは、好奇心と少しばかりの「怖さ」を利用したいわゆる「ホラーマーケティング」でした。

入口はちょっとした噂話。例えば……

「地元の噂話に出てくる『霊(あるいは妖怪など)』の声が聞こえるらしい」

そして、そのローカルな伝説の内容となる短い物語。

さらに、「確かめたければ今すぐこの場所に行ってみてください」という具体的な「最初の一歩」の提示。

3.ホラーマーケティングに不可欠な「ストーリー性」

ホラーマーケティングのポイントとなるのは物語です。

それも短くて、ピリッとしていて、想像を掻き立てる物語。

物語があまりにも陳腐では「先が読まれて」しまって、お客さんの行動を誘発することができません。また、地域性や地元の個性を盛り込まなければ「その場所ならでは」の相乗効果が出せません。

物語ツーリズムにおける大前提としては、その両方を巧く組み込んだ面白いストーリーが絶対に必要なのです。

そこで、オススメしたいのが「ホラーストーリー」です。

さて、突然「ホラーストーリー」などと言われて、いったい何のことやらとあなたは困惑しているかもしれません。

「地元の伝説なんて全然知らない」

「怖い話は苦手」

「そもそもそんな物語、どこで手に入れるの?」

大丈夫です。使えそうなストーリーがなければ作ればいいのです。

AI時代の今なら、あなたが思っているより3倍面白い(怖い)話が、30倍の効率で、しかも簡単に創作できます。

4.体験の核となるホラーストーリーの作り方

「ホラーストーリー」の作り方に話を戻しましょう。

あなたの地元にお客さんを呼び込むホラーマーケティング。それを具体化するためには、実在する民話や昔話をそのまま使うのもいいのですが、より効果的なのは、それらを現代的にアレンジして絶妙なリアリティを加えた物語。つまり「都市伝説」というスタイルです。

そうすれば河童や天狗といういかにも長閑なキャラクターだけでなく、UFO、異世界、謎のパワースポット、心霊現象、闇バイト、埋蔵金伝説……。そんな怪しい「噂」の世界線を切り拓くことができます。

「民話の里」とか「ふるさとの伝承」というのはイメージ的に無難で耳障りの良いものですが、日本の地方自治体のパンフレットではあまりにも多用されすぎていて、もはや観光客の目には書いていないも同然です。むしろ「陳腐な展開」を予感させてマイナス効果しかないと言ってもいいでしょう。

SNS慣れした現代人に刺さりやすい「都市伝説」というビジョンは、実際に宣伝する際には強力なキャッチフレーズになるのです。

■都市伝説系シナリオの簡単な作り方

最初は噂話、そして『語り手』の体験へ、最後には主人公自身が巻き込まれる。というふうに徐々に恐怖が近づいてくるように演出します。

●【噂話】

都市伝説はそもそもが噂話ですから、多くは伝聞として語られます。

そこでまずは、『語り手』役の人物が登場し「誰かが怪異に遭遇した」という話をしゃべり始めます。

●【体験談】

次に噂話から体験談へとレベルを昇格させます。『語り手』がその噂話を、実は自分自身の体験なのだと告白するのです。肝心なのは『語り手』役の人物がラストまでは語らないということです。途中で座を外して消えてしまうとかして物語から退場させましょう。

●【物語】

最後に、『聞き手』であったはずの主人公がその怪異を体験するという結末を作ります。その怪事件を聞かされた主人公が自分も巻き込まれてしまうというオチです。

●【構成例:】

田舎のキャンプ場で知り合った男が私に語った。

この近所でTV番組の探検隊が

「住民全員が突然姿を消した」村を発見したという報告を入れた後、

自分たちも行方不明になってしまった。

男はその探検隊の捜索のために村に派遣され、

事件を詳しく調べることになった。

そして彼は恐ろしいことに気づいてしまったのだという。

……だが、その話の途中で男はこつ然と姿を消してしまう。

一人になった私がふと気がつくと

自分もまた異世界に足を踏み入れてしまっていたのであった。

***

今まで「語り部」が語っていた都市伝説の中に主人公が放り込まれてしまう

……というオチに到達するように構成するわけですが、要素の組み合わせを変えるといろんなバージョンが作れます。あなたの地元の言い伝えなどを使用すればオリジナルのご当地伝説の出来上がりです。

5.ホラーマーケティングの懸念点と対処法

もちろんホラーマーケティングには懸念される点も多々あります。

●家族連れに刺さらない/怖すぎクレームが怖い

●地元合意が取れない(文化・宗教・学校の壁)

●人手が足りず運営が回らない(属人化)

しかし、それらを払拭するのもまた「ストーリー」なのです。

誰でも楽しめる“ほどよい怖さ”の設計

「怖い=不謹慎」の反発を鎮め理解者を増やす語り口

“誰でも回せる”台本と仕組み

それはすべて物語作者の匙加減ひとつでコントロールできます。

お客さんの層に合わせて「怖さ」のレベルを上げたり下げたりすることも可能です。

家族向けに恐怖感を薄め、不思議さの段階を上げればそれは「ファンタジー・ツーリズム」の仕掛けになります。室内型のイベントには「謎解き」をメインにした「ミステリー・ツーリズム」のほうが有効かもしれません。もちろん地元の昔話を中心に据えた「民話ツーリズム」だって展開できます。

ぜひ地元に眠る「物語」を資産化し、あなたの作品創りのために、そして地域の活性化のために活用してください。

個々の条件に沿った面白いストーリーの作り方がお知りになりたければぴこ山ぴこ蔵にメールして下さい。秘策を伝授します!

pikozo@gmail.com

新しい時代を「物語の力」で楽しく切り拓きましょう!

***

あらすじドットコムhttps://www.arasuji.com

主宰:今井昭彦(ぴこ山ぴこ蔵)

面白い(怖い)ストーリーは、実は誰にでも作れます。文芸作品を書いた経験や自信がなくても全く問題ありません。あらすじドットコムが20年かけて研究開発してきたメソッドと、創作を支援するツールや最新の生成AI用のプロンプトが、あなたが目指す物語のビジョンを描き、それを形にする手助けをします。

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