完全公開! PIKOZO METHOD事始め

作者は、何もないところから物語を書くわけではない。まず、日常のどこかで感情が反応する。その中に、作者の中でまだ終わっていない認識遷移が潜んでいる。これは突き詰めればそういう話である。
ぴこ山ぴこ蔵 2026.09.24
誰でも

【PIKOZOの夜毎日毎】

この夏、持病をこじらせて体調を崩し、1ヶ月以上も入院することになった。

体験をすぐにストーリー化する癖のある私は、病院のベッドの上で発熱による悪夢にうなされる自分を、最初は面白がって捉えていた。しかし、苦痛が大きすぎてすぐにその余裕は失われた。

なにしろ病院の飯は不味いのである。こちらの体調が悪いせいもあるし、毎日の不摂生が祟って減塩・糖質オフなため、もう何を食っているのか分からんほど混乱した。全部自分が悪いのだけれど、食い物の恨みは怖ろしいのだ。逆恨みだからもっとこじれる。

たちまち心を黒く染めた私は、病院食が美味しくない原因を邪推し、責任を取らせるための自分以外の犯人を探し、何が間違っているのかを執拗に追究した。

タチの良くないナニモノかが、悪意を持って私を罠にはめたのでありますようにと心から願った。そうでなければこんなにも毎食、苦手なにんじんのサラダが出るわけがないではないか。

敵を発見しさえすれば全ての料理は改善され、おいしいごはんという目的が達成されるに違いない。私は「めでたしめでたし」というカタルシスを強く求めていた。

ところが一方で、それが幻であることも私はとっくに知っていた。病気の場合、敵は登場しない。そこには、人は必ず死ぬし、いつかは必ず衰えるという原則があるだけだ。全て時の流れは不可逆なのだ。何しろいい歳なのでそれぐらいは判るのだ。

問題は、必ず死ぬのは一般化された誰かではなく「私自身」であり、老いて衰えるのも他人ではなく「私自身」だということを痛感してしまったことだった。さすがにため息が出た。

もちろんそんなことは、常識として、当然の帰結として、疑いようのない事実として、認識はしていた。

しかし、そんな重大なことが、よりによってこんなタイミングで、まさか自分事として降り掛かってくるとは思わなかったのだ。

さあ、困った。人生に逃げ場が無くなってしまった。もともと根性がない上に、体力を使い果たし、かなりの時間を失ってしまったドンくさい私は、ふたたび生き延びる力をどこから引っ張り出せばいいのか。

いつまで経っても飯はうまくならないし、にんじんのサラダも止まらない。

そんなある日のことだった。

***

この苦境から救け出してくれそうな正義の味方や、問いかけの答えを探すうちに、私は自分の人生と創作の根本的な勘違いに気づいた。

「これは思考の枠組み自体を何とかしないと、現実のほうはどうにもならないぞ……」

そこで私の体験と、重要な違和感を、あのどんでん返し構文に当てはめたらこうなった。

「人生の不条理から抜け出すのに必要なのは、見果てぬ夢を追いかける剛さだと思ったら、避けられない現実に向き合う柔らかさだった」

つまり、失った何かを無理やり取り戻そうとするのではなく、自分自身の認識を変えたほうがリアルかつ合理的で、無駄がないことに思い至った。

視点を、考え方を、目的を、ガラリと変えるのである。

人生を縛るのも、そこから抜け出すのも、突き詰めれば「認識の遷移」でしかないのだ。

ここで「いや、それではオレの美学が……」とか「生き様が……」などと突っ張るのもカッコいいのだが、実際に1ヶ月も薄味の病院食を食べ続けていると、とにかく一刻も早く家に帰ってチーズバーガーを頬張ってコーラをがぶ飲みすることしか考えられなくなる。(もちろん退院しても食べておりませんが)

とにもかくにも退院し、辛いカレー(これは我慢できなかった)によって気力は何とか恢復した。

だが、決定的に気づいたことがある。もう若くない自分に時間があまり残されていないのは確かだということだ。

敵は病気ばかりではない。災害や事故はもちろん、お調子者ばかりを狙う忌まわしい特殊詐欺に巻き込まれたり、前世の因縁でマダラカマドウマに転生してしまうかもしれない。人生、何が起きても不思議ではないのだ。年齢的にもそろそろ覚悟を決めろということなのだ。

***

そこでこれからは、入院の直前に書き留めたメモを紐解きながら、未発表のメソッドをどんどん公開していこうと思う。隠していたつもりはないが、整理するのが面倒だったのだ。

しかし、もしかすると、これが最後の伴走企画になるかもしれないと思うと、怠惰な私の手も動く。

私だけの問題ではない。これを読んでいるあなたにとっても、書くための時間がどれだけ残されているか判らないのは一緒である。あるいは次の作品があなたの「遺作」になる可能性だって十分にある。

だから私はできるだけ急いでこの秘密を開示することにした。

私たちが生きる人生も、私たちが紡ぐ物語も、本質は同じだ。

物語とは、出来事の集まりではなく、認識が変化していく旅そのものである。

その旅の舵をどう切るのか。その答えを、ここから解き明かしていこうと思う。

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ぴこ蔵の覚悟の内容が気になる人はこちらをお読み下さい。

PIKOZO最後の長期「構造添削計画」始動、乞うご期待!

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