AIを使って「伏線」を張る方法

AIに面白い物語を作らせるために絶対に使いたい「どんでん返し」。その具体的な手順を詰めていくと、やがて『伏線』はどう張ればいいのか? という難題に突き当たる。
ぴこ山ぴこ蔵 2024.11.08
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どんでん返しを作る構文(第3回)

こんにちは、ぴこ山ぴこ蔵です。

どんでん返しを簡単に作るための構文は以下の2つ。

「XをYするのは、Aだと思ったらBだった」

「XをYするのに必要なのは、Aだと思ったらBだった」

それを踏まえた上で、今回は「伏線」の話をしようと思います。

前回、どんでん返し構文からAIに作らせた物語、「トースターと犬と朝食」には3人の人物と1匹の犬が登場しました。

効果的な伏線を張るためには、そのネタとなる彼らの「行為」や「小道具」を見つける必要があります。

このストーリーの鍵は「犬」と「トースター」です。男女の恋の物語だと思いがちですが、本質的には「トーストを作る犬のストーリー」なのです。

ここで重要なのは、なぜ犬がトーストを作ったのか? どうやってパンを焼いたのか? そんな芸当をいつ覚えたのか? ということです。なぜなら読者がその秘密を一番知りたいからです。

ですから「犬がトースターのレバーを押した」という行為の原因とそのメカニズムを伏線として張っておく必要があります。読者に確実に説明して納得してもらうためです。

そこで、AIにこんな指示を出しました。

「犬がトースターのレバーを押したのはなぜか? その原因となる過去の体験を教えて下さい」

そして、AI(今回もClaude3.5です)が答えてくれたそのエピソードをプロローグとして物語の最初に持ってきました。それに合わせて細部も私が少し書き換えることにしました。

こうして書き直された作品をお読みください。

「マックスの朝の儀式」

ガチャリ。

家に来たばかりの頃、幼いマックスはトースターから飛び出すパンの音が怖かった。

ある日、青年が怯えるマックスを抱き上げ、優しく撫でながらトースターの仕組みを見せてくれたた。レバーを下げると、しばらくしてパンが飛び出してくる。その度に、青年はマックスに小さなパンの耳を分けてくれた。

いつしかマックスは、青年が台所に立つと、後ろ足で立ち上がってカウンターに前足をかけ、トースターを覗き込むようになった。

やがてマックスは密かにそのレバーを押し下げることを覚えた。

***

「おばあちゃん、恋愛って難しいよね」

私は深いため息をつきながら、祖母の家の古びたソファに身を沈めた。つい先日、2年間付き合った彼氏と別れたばかりだった。

軽い口ゲンカが原因でこんなことになるなんて。

私は人生が投げつけてきた初めての辛辣さに、予想外に動揺していた。

祖母は優しく微笑んで、温かい緑茶を差し出しながら話し始めた。

「そうねぇ。でも、恋の思い出って、意外なところに宝物として残るものよ。私にも忘れられない思い出があるの」

それは、祖母が20代前半だった頃の話。

当時、祖母は若き会社員として働いていた。付き合い始めて3ヶ月の彼が、初めて彼女を自宅に招くことになった。彼は料理が得意で、特別な朝食でサプライズをしようと計画を立てていた。

前日から買い出しを済ませ、レシピも何度も確認した。フレンチトースト、手作りジャム、新鮮なフルーツサラダ、そして彼女の大好きなハーブティー。完璧な朝食を作るため、彼は普段より2時間も早く起きた。

キッチンで準備を始めて間もなく、玄関先で新聞配達の音が聞こえた。彼は急いで受け取りに行った。その短い間に、彼の飼っていた1歳になったばかりの犬がキッチンカウンターに前足をかけ、トースターをくんくん嗅いでいた。

彼が戻ってきた時には、既に彼女が目を覚まして階段を降りてきていた。パジャマ姿のまま、寝ぼけ眼でキッチンに立つ彼を見て、彼女は少し驚いた表情を浮かべた。

そのとき、ガチャリという音とともにトーストが飛び出した。

「しまった! いつもの癖でトースターにパンをセットしといたら、マックスがこんがり焼いちゃった! 今日は違うメニューを作るつもりだったのに!」彼が慌てて言う。

すると犬のマックスが尻尾を振りながら、得意げな表情で二人の間に割り込んできた。状況を理解した二人は、思わず笑いが止まらなくなった。

その朝、二人は犬が焼いてくれた少し焦げたトーストと、急いで作ったスクランブルエッグを一緒に食べた。完璧な朝食にはならなかったけれど、それは二人にとって特別な思い出になった。

「結局、私たちは半年後に別れることになったわ。でも、マックスのおかげで、完璧を目指しすぎる必要はないということも学んだわ。時には、予想外の出来事の方が、かけがえのない思い出になることもあるのよ」

祖母はそう語り終えると、また優しく微笑んだ。

私は急に心が軽くなるのを感じた。そして決心した。明日、近くの保護犬施設に行ってみようと。新しい人生の伴侶を見つけに。

それは人ではなく、四本足の親友になるかもしれない。でも、きっとそれも素敵な選択なのだと思った。

伏線を張る理由

お気づきのように、この物語のクライマックスには、肝心の「マックスがトースターのレバーを押し下げるシーン」が描写されていません。

代わりに「犬がトーストを焼くメカニズム」と「その原因となった出来事」がプロローグとして書かれています。

そのおかげで、クライマックスでマックスが二人の朝食用のトーストを焼くシーンを描くことを省略できました。

なぜ省略したのでしょうか?

それには理由があります。

このシーンを伏線なしに描こうとすれば、プロローグで書かれた要素を、クライマックスの一番いい場面で、誰かの回想という形にして挿入する必要が出てきます。

なぜ犬がトーストを焼いたのか? どうやって焼いたのか? そんな芸当をいつ覚えたのか?

探偵小説でもないのに、物語の終盤で「謎解き」という無粋な説明をする羽目になるわけです。

ここは話の重要な転換点なので、さっさとテンポよく運びたいのです。言わずもがなの余計な文章を読者に読ませたくないのです。そんなことをすればキレが悪くなり、新鮮な驚きが失せてしまうから。

何よりも、視覚的に想像させる最大のコツは「描写しない」ことです。

プロローグで「犬がトーストを焼くメカニズム」がしっかり伝わっていれば、クライマックスではあえて省略することで、読者の脳内補完によってむしろくっきりとそのシーンが浮かび上がるはずです。

マックスがトーストのレバーをこっそり押し下げている映像が。

伏線は後出しジャンケンではいけません。出来事が起こる前に張られていなければ意味がありません。

伏線を張る理由は、物語の『転換点』が訪れた時にくだくだと説明されなくても、読者が一瞬で真相を理解できるようにするためです。

あなたのストーリーにはそんな伏線が張られていますか?

XYAB構文を作ってみよう!

そもそもこの話をAIに構成させられたのは、最初にたった50文字の「XYAB構文」を作ったからです。

その50文字の中に、物語を面白くする上で最も重要な要素である『転換点』が含まれていたからです。

それはつまり「予想外の出来事が起こって、物語を意外な方向に転じる」というポイントです。

転換点があるからこそ、ストーリーは面白くなるのです。

マックスがトースターのレバーを押さなければ、この物語は平凡なままなのです。

さらに、犬によってパンがトーストされたことで、作者である私は自分が言いたかったメッセージを見つけることができました。

ちなみにそれは「良くも悪くも、人生を豊かにするのは予想外の出来事だ」という実感ですが、気がつけば物語はまさにそういう内容になっていました。

不思議なことに、最初の50文字だけで、私にはこの物語の全景が見えたのであります!

偉そうなことを言っていますが、実はこれ、XYAB構文を使った人なら誰でも体験できるのです。

あなたも転換点を作ってみませんか? XYABを手順に従って並べるだけです。

次回はそんなXとYとAとBをどうやって見つければいいのかという話をしたいと思います。

お楽しみに!

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受講者様からの感想

「それにしても面白いですね。結局、11個のあらすじをプロットウィザードで作りました。作れば作るほど、自分の好みというか、目指したい作風がはっきりしてくるような気がします」(S・N様)

「20,000文字の小説にしてみました。チャットGPTとのやり取り、Plot Wizardを参考にさせて頂きました。はじめてAIを取り入れての作品でしたので、戸惑うこともありましたがどうにかエンディングまでこぎつけました。」(T・N様)

「こんなにも的確にAIでの効率的な物語制作の方法と、自分が書きたい事を見つめる方法を教えてくださり、本当に感謝しかありません。PDFと動画、何度も見返して実践いたします。」(R・O様)

「分かりやすいアドバイスで実りの多い時間となりました。今回提出したあらすじで、12月〆切のコンテストに応募を考えています。面白いプロットを詰めて行って勝負しようと思っています。」(M・T様)

「時代は大変な勢いで変わっているのですね。AI小説、チャレンジしてみます。」(Y・M様)

「ご提供いただいた創作ツールと授業動画の情報、ありがたく拝受いたしました。これらを有効に活用させていただきます。ご丁寧なご対応に重ねて御礼申し上げます。」(Y・S様)

お申し込みは3名様まで。お早めにご予約ください。

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