生成AI時代のストーリーテリング

ニュースレター『生成AI時代のストーリーテリング』の配信を始めるに当たって、まずは『ストーリーテリング』とはどんなスキルか、またそれはどうやって作られるのかを説明したいと思います。
ぴこ山ぴこ蔵 2024.02.06
誰でも

◆新時代の物語創作序論

こんにちは、ぴこ山ぴこ蔵です。

『生成AI時代のストーリーテリング』をお読みくださってありがとうございます。

2023年11月、ChatGPTを運営するOpen.AI社は、「自前のGPTを作るサービス」である『GTPs』を公開しました。その最大のインパクトは、GPTストアによる個人の制作したGPTの流通販売システムにあります。

現時点では日本でのスケジュールは未定とは言え、遠からず自作の生成AIをストアで売ることが出来るようになるわけです。

文字コンテンツを制作する私たちにとっては、テキストだけで挑戦できる巨大なマーケットが突然出現するという「超ラッキーな瞬間」に遭遇したということに他なりません。

原理的には、あなたのスキルを直接マネタイズできるようになったわけです。

これまでは、いかにテクニックがあっても、実際に作品や記事やセールスレターに加工しなければ「文章技術」が市場に流通することはありませんでした。

しかし、GPTsを使えば、会話で指示するだけでノーコードでプログラミングできます。あなたはあなたの身に付けた技術を、いとも簡単にアプリにして売ることが可能になったのです。

必要なのはノウハウと日常的な会話能力だけです。

これを利用せずに他に何をしろと言うのでしょうか?

それにしても、いったい何のノウハウがあればいいのでしょうか?

そこで、このニュースレターでは、生成AIを構築する際に利用できる素材の一つとして、実践的なストーリーテリングの技術を伝授していきたいと思います。

そもそも人間の芸術行為の成果である小説や漫画を、AIに直接制作させねばならない理由など、LLM技術の進捗の確認以外の利用価値はありません。

それなのにAIで物語を書こうとする人は、創作の「苦しさ」を回避したいだけなのです。

しかし、人が物語を書く一番の理由は「楽しいから」です。

苦しさも込みで「書く」という作業を楽しめなければ、作者は次の物語を生み出すこともありませんし、そんな熱病のような伝染力のない作品が面白いわけがないのです。

そして、ストーリーテリングこそは、まさにその「書く楽しさ」を伝える技術だと言えます。

生成AIとは、そんな「物語を作る楽しさ」を教えるための道具だと考えてみてください。

だからこそ、生成AIの使い方を論じるに当たって、まずはその目的である『ストーリーテリング』とはどんなスキルかについて説明したいと思います。

あなたはこの「ストーリーテリング」のメソッドを参考に、あなたが物語を作るための手順を公開するつもりで、まずは自前のGPTを制作してみることを想像してください。

自分だけの理論を構築するのも楽しいものですが、他の誰かが作ったGPTを改造して、あなたならではの手法をプラスしてみる、ということも可能です。

最終的な目標は、その自前のGPTを使って、自分の物語を最後まで完成することです。

「途方も無い話だ」と今あなたは思っているかもしれません。しかし、実際にやってみれば、それが非常に簡単であることを実感できるでしょう。

そして、その行動によってあなたは、生成AIを使って物語を作るという行為の全く新しい価値を体験することでしょう。

今ここで参加しておかなければ、恐らくあなたは後悔することになります。

新しい時代が始まったのです。

それでは「ストーリーテリングとは何か?」を考えるきっかけとして、物語を分析するためにまとめられたいくつかの有名な方法論を見てみましょう。

物語構造にはさまざまな種類がありますが、代表的な型としては以下のようなものが有名です。

●三幕構成

物語を第一幕(導入)、第二幕(展開)、第三幕(結末)の三つの部分に分ける方法です。

第一幕では主人公や設定、問題などが紹介されます。

第二幕では主人公が問題に挑戦し、困難や転換点に直面します。

第三幕では主人公が問題を解決し、物語がクライマックスや結末に向かいます。

この方法は映画やドラマなどでよく使われています。

●ヒーローズ・ジャーニー

主人公が日常から非日常の世界へ旅立ち、冒険や試練を経て成長し、日常へ帰還するという物語のパターンです。

このパターンは神話学者のジョセフ・キャンベルが提唱したもので、世界中の神話や伝承に共通する要素だと考えられています。

この方法は『スター・ウォーズ』や『ロード・オブ・ザ・リング』などのファンタジー作品に多大な影響を与えています。

●プロップの形態学

ロシアの文学者ウラジミール・プロップが提唱した方法で、魔法物語(おとぎ話)を31の機能(物語を進める行為)に分けて分析するものです。

例えば「禁止」「違反」「捜索」「魔法の手段の提供」などが機能にあたります。

また、登場人物も7つの行動領域(役割)に分けられます。例えば「主人公」「敵対者」「魔法の授与者」などが行動領域にあたります。

この方法は物語の基本的なパターンを抽出することができます。

●バルトの記述論

フランスの文学者ロラン・バルトが提唱した方法で、物語を5つのコード(意味体系)に分けて分析するものです。

例えば「参照コード」は物語に登場する事実や情報、「行為コード」は物語に登場する行動や出来事、「意味化コード」は物語に登場する象徴や隠喩、「文化コード」は物語に登場する文化的な知識や価値観、「声コード」は物語に登場する作者やナレーターの声などがコードにあたります。

この方法は物語の多層的な意味を解釈することができます。

●そして、ぴこ蔵の「どんでん返し」メソッド

上述した物語の構造論は、ナラトロジーを学ぶ際の教科書としてよく用いられる考え方です。

ところが、ドンデニスタ・ぴこ山ぴこ蔵がこのニュースレターで提唱するのは、さらに実践的で、もっととんでもない方法です。

これからそれを紹介します。

そもそも私、ぴこ山ぴこ蔵は、20年間にわたり「あらすじドットコム」というサイトを主宰して、面白いストーリーの作り方を解説してきました。

読者からのご相談の中で特に多いのが、「物語が最後まで書けない」というものです。

そしてもう一つは、「アイデアはあるのに話が面白くならない」というものです。

もしそんなお悩みをお持ちなら、あなたがまず作るべきは「どんでん返し」なのです。

◆「物語」とは感情と感覚を伝えるための技術

ダースベイダーの正体が自分のお父さんだったり、伝説の少女とはナウシカ自身のことだったり、デビルマンの導師役である親友こそが天敵の大魔王だったり…。

信じきっていた世界があっという間にひっくり返されて、「ぎょえええっ?! 嘘だろっ!?」と頭が真っ白になる瞬間。

それが「どんでん返し」です。

あなたの物語が読者を満足させるために必要なのは、そんな「まさかの出来事」が生み出す、驚きに満ちた展開です。

ストーリーテリングの目的とは、あなたの感覚と感情を、文字の形にして伝え、読者の脳裏で再現させることです。

驚き、悲しみ、怒り、笑い、寂しさ、楽しさ……。それらを読者の心にテレパシーのように転移することです。

読者の心を激しく揺さぶる「どんでん返し」を作るという行為は、あなたの物語のゴールを明確に決めてしまうことでもあります。

つまり、あなたの物語が読者に与える「効果」の種類を決定すること。

これでもう創作の荒海で航路に迷うことはなくなります。

どんでん返しが灯台のようにあなたを導くのです。

◆常識を破壊する技術

面白い物語を作りたければ、最初にどんでん返しのタイプを決めてください。

どんでん返しタイプの選択と決定は、ストーリーの全制作工程を、地図のように俯瞰して可視化するのに有効です。

タイプを決めることによって、まるで高速道路のジャンクションのように、複数のストーリーラインが交錯するポイントが出現します。

結末も、感動も、主人公も、敵も、伏線も、事件も…、物語のあらゆる要素がそのどんでん返しに集結します。

●具体例

「壺を盗んだのは貧しい少年だった」

というネタを思いついたとします。

話を面白くするならば、作者はそのネタからどうやって感動を生み出すかを考えなければなりません。

感動の焦点は、高価な壺を盗んだ瞬間の少年の背徳的な爽快感なのか?

あるいは、罪の意識に苛まれた少年が壺を返しにいく、という倫理的な安心感なのか?

それとも、なぜ少年がそんなものを命がけで盗んだのかを語ることで発生する謎解きの面白みなのか?

いずれにせよ、その後のいろんな展開を考えたり、結末をどうするのかを決めたり、そもそもこの話が面白いのかどうかを悩んだりする、という大変な作業に入ることになります。

とてもじゃないけど、これだけで物語の全体像を作るのは無理です。

そこでどんでん返しを入れてみます。

***

●どんでん返しを入れる

「壺を盗んだのは貧しい少年だったと思ったら、金持ちの男だった」

このように「Aだと思ったらBだった」というどんでん返しの形にすると、このネタは物語の結末に使うのが最も効果的だ、とピンとくるわけです。

おそらく多くの方もそう感じると思います。

このゴールに向かって走り出せばいいという感覚が生まれるのです。

なぜなら、ここには意外な展開があり、そのために張るべき伏線の方向性が見えており、弱きを助け強きを挫く勧善懲悪のカタルシスが成立する予感がするからです。

「完成」の手応えがあるのです。

どんでん返しには、このように前提条件の枠組みを取っ払い、意味を変える瞬間を創出する力があります。

どんでん返しをくらうと、それまで漫然と信じていたルールや、当然とされてきた仕組みの、奇妙な齟齬や矛盾に気づきます。

つまり、どんでん返しは「常識を破壊する」ための技術なのです。

読む前と読んだ後では、考え方が大きく変わっている。

それこそが「面白い物語」の条件ではないでしょうか?

そんな「どんでん返し」に明確な法則性があることは、これまであまり語られてきませんでした。

むしろ、全く重視されなかったと言ってもいいでしょう。

「私が書きたいのは犯人探しミステリーじゃないから」

「なんとかのサスペンス劇場みたいで安っぽくなりそう」

「そんなものに頼らなくても俺の作品は面白い」

「そもそもどんでん返しって何?」

「どんでん返し」をまともに取り上げない理由はこんなところですが、それは私たちの中の権威主義がもたらす誤った思い込みによる情報不足にすぎません。

どんでん返しの役割は単なるドッキリ効果だけにあるのではありません。どんでん返しは、起承転結でいえば「転」にあたる、非常に重要な部分なのです。

※「どんでん返しの作り方」を徹底的に解説した詳細なノウハウはぴこ山ぴこ蔵の電子書籍でお読みください。

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◆物語化するには「転」が重要

あらゆるストーリーに共通するテーマは、主人公の変化です。

物語が生命を描くものである以上、成長か堕落か成功か失敗かに関わらず、そこには「変化」がなければ意味がありません。

起承転結で言えば「転」で語られる、その作品の、そして作者であるあなた自身の人生を象徴する「変化」の瞬間。

弊ニュースレターでは、この『「転」から物語を作る方法』にこだわります。

全てを「どんでん返しを成立させるため」に作っていくことで最初から必要な伏線やサブプロットが把握できるため、緊密で無駄のない物語が効率的に構築できるからです。

しかもこの方法だと確実に「最後まで」作ることが出来ます。どんでん返しを作ることで「結末」も導きやすくなるからです。

今まで、物語を書き始めたことはあっても、なぜか最後まで書き終えられなかったあなたや、途中で悩んで投げ出してしまいがちだった方にはぜひ試してほしい創作法です。

そんな「どんでん返し」を作る方法は、

思いつきのオープニングばかりに目を奪われ、途中でエネルギーが切れて失速してしまい、ストーリーをフィニッシュさせた経験が少ない……。

そんな初心者の強い味方なのです。

そして、何と言ってもどんでん返しの最大の魅力は「物語を面白くする」ということにあります。

「面白い話があるんだけど……」という一言がいかに絶大な破壊力を持つか、あなたもよくご存知でしょう。

では、「面白い」って何なのでしょうか?

それは次回にお話しましょう。

<次号に続く>

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